はみだしつば

堂本剛さんに関する一つの見解

2014-01-01から1年間の記事一覧

【レビュー】M album

KinKi Kids 約一年ぶりの新作『M album』は前作に引き続き二枚組。アイドルポップスとしての会心作に仕上がった。 主に新曲で構成されたDISC1「Moments –瞬間-」は、作詞作曲アレンジャー陣から「わかりやすい」ビッグネームが消え、新進若手ミュージシャン…

硝子の少年はどこへ向かう

11月28日のMステを見た。披露された曲は、12月10日発売ニューアルバム収録の『SPEAK LOW』(堂島孝平氏の作詩作曲編曲)だった。ブラスを交えたバンドの音はファンキーでゴージャス。そこに程よく抑制のきいたヴォーカルがのることで、たおやかな色気と唸る…

関係性の取り扱い

11月12日にニューシングルがリリースされた。そのプロモーションの一環で出演した朝の情報番組を見て個人的に感じたことを残しておこうと思う。 -- 「デビューから17年、アイドル街道を突き進んできたあの二人組の魅力に迫る」と銘打って特集された5分程度…

誰のための幸せか---FUNK詩謡夏私乱を振り返る

私自身は参加できなかったが、雑誌記事やネット上でのファンの方々の反応を見て感じたことを書き記しておこうと思う。2014LIVEツアー『FUNK詩謡夏私乱』。※外部からみたひどく勝手な講釈ですので読んでいて合わないと感じられたらすぐにお引き取りください。…

読書メモ『ポピュラー音楽の社会経済学』

『ポピュラー音楽の社会経済学』(高増明 編)を読んだ。「CDが売れなくなった」日本の音楽シーンをめぐる厳しい状況を、経済、ビジネス、技術、社会的観点から総合的・体系的に分析した一冊。読んでいて気になった点をまとめた。※個人的な関心に基づく断片…

ひとつの音楽番組の終焉

前番組からカウントすると18年間続いた番組が終わる。 1996年にスタートした前番組は、よく見ていた記憶がある。吉田たくろうというテレビではめったにお目にかかれない大物ミュージシャンが、若い二人組アイドルをメインに据える(軟派な?)音楽番組に出演…

読書メモ『有名性という文化装置』

石田佐恵子著『有名性という文化装置』を読んだ。有名性をめぐるコミュニケーションのあり方や歴史、オーディエンスのアイデンティティを論じながら、有名性を保証する仕掛けをシニカルに分析する論考。1998年初版と古い本だが、以前取り上げた『「アイドル…

『HEIAN FUNK』を楽しむ条件

HEIAN FUNK 平安神宮ライブ2013 [DVD/Blu-ray]を見た。 レビューとして記事をアップさせたかったが、断念した。雑念が混じってしまい、映像作品として純粋に楽しむことができないからだ。需要はなさそうだが、この雑念部分について吐きだしておきたい。 個人…

読書メモ『「アイドル」の読み方』

香月孝史著『「アイドル」の読み方---混乱する「語り」を問う』を読んだ。女性アイドルに焦点をあて、古くから社会で共有される「アイドルらしさ」のイメージと今日のアイドルの新しいあり方を比較しながら、アイドルという芸能ジャンルの特性を明らかにしよ…

選曲の妙

遅まきながら8月2日に放映されたTBS『音楽の日』(第四回)を見た。 第一回が東日本大震災から四ヶ月後だったこともあり、コンセプトが「一つになって歌の力でニッポンを元気づける」だった(らしい)が、今回もそのコンセプトをファジーに踏襲しているのだろ…

『プラトニック』の青年

ドラマ終了から時間が経過し、視聴者それぞれの『プラトニック』熱が冷めてきたような気がするので、少し個人的なことを書きたいと思う。 思えば、『プラトニック』をドラマとして楽しめたのは初回のみだった。第二話では私個人の「地雷」に触れるシーンが多…

『プラトニック』と夢と現実(2)

『プラトニック』最終話を見た。 -- ※ドラマの見方は人それぞれです。以下の文章は、ごく個人的な『プラトニック』の世界の解釈です。制作サイドの意図したものから外れている自覚があります。多種多様な解釈を楽しむスタンスをお持ちのかたのみお進みくださ…

『プラトニック』と夢と現実(1)

『プラトニック』第7話を見た。 -- ※ドラマの見方は人それぞれです。この『プラトニック』は、視聴者の経験則や人生観、願望、こだわり等が大きく反映され、同じストーリーを追っていても全く別の解釈を生み出すタイプのドラマのように感じます。さまざまな…

『プラトニック』と僕と俺 --補足--

前回の記事が書き込み不足のため、補足しておこうと思う。 -- ※ドラマの見方は人それぞれです。特にこの『プラトニック』は、ご丁寧な説明が省かれていますので、視聴者の経験則や人生観、願望、こだわり等が大きく反映され、同じストーリーを追っていても全…

『プラトニック』と僕と俺

「プラトニック」第6話を見た。 ※たくましい想像力で補っています。ああ、こんな解釈もあるかもね、と軽く読み流せる方だけどうぞ。 ※助詞の間違い及び書き込み不十分で誤解を与えかねない箇所を見つけたので加筆しています。大意に変更はありません。(7月1…

『プラトニック』とレイヤー青年

プラトニック第5話を見た。※たくましい想像力で補っています 主人公・沙良と青年の生い立ちが明かされ、二人の共通点が浮かび上がった。ざっくり言うと、家庭において居場所がなかったこと、自分のアイデンティティに無関心に生きてきたこと(他人志向で生き…

『プラトニック』と「あの言葉」

ドラマ「プラトニック」第四話での終盤のシーン。青年が「あなたは美しいのだから女を捨てただなんて言わないで(ニュアンスです)」と諭すのに対し、主人公・沙良が、シャツのボタンをはずしながら「母親だから女の部分を大切にすることをやめた」「(医師…

『プラトニック』の世界の拡がり

たしかに、ドラマ「プラトニック」でのどうもとつよしによる「青年」の表現は凄い。「青年」が意図的に流動的で、一秒先の出方が誰にも想像できない。この視聴者にとってのスリリングな体験は、脚本家や演出家が解釈を役者に丸投げする、というとんでもない…

読書メモ『舞う身体、這う身体』

金満里著「舞う身体、這う身体」(『身体をめぐるレッスン〈1〉夢みる身体』鷲田清一編)を読んだ。著者が主催する「劇団態変」の役者は「全員が身体障害者」であり、著者自身も「三歳でポリオに罹患して首から下の筋力が失われ」ている。この論考で筆者は、…

『プラトニック』と「あの表情」

ドラマ『プラトニック』第一話を観た。 主人公の相手役・青年はミステリアスだ。物腰から「やさしさ」らしきものが滲み出ているものの、ドウモトツヨシの掴みどころのない、スルリと逃げるような、まさに野島氏が言うところの「猫感」溢れる演技により、視聴…

『プラトニック』と愛について

※以下、過去の野島作品の傾向に触れていますので、ドラマ『プラトニック』をまっさらな気持ちで堪能したいかたはご遠慮ください。 5月25日からはじまるドラマ『プラトニック』のテーマは、「生と死」「愛によって死の恐怖を克服することはできるのか?」…

ラベリングの産物

5月17日のラジオにて、パニック障害を抱える友人への接し方についての相談があった。「そんなに関与しないであげて」「かわいそうによしよしと慰めるだけではその子の力は出ない」「本当にしんどそうな時だけ声をかけてあげて」(※ニュアンスです)などの対…

音楽と労働

ラジオを聴いていたら、ドラマ撮影の休日にレコーディングの仕事が入ったりするので頭を切り替えるのが大変、といったような話題が出た。それは大変だろう。マネジメント担当者がどのような心境でそんなスケジュールを入れるのかはわからないが、ドウモトツ…

ネタとベタとドラマの話

野島伸司脚本ドラマといえば、『ストロベリー·オンザ· ショートケーキ』(2001年、TBS)が真っ先に頭に浮かぶ。とはいえ、ストーリーやテーマといった、ドラマを成立させる主要なものが思い出されるのではない。湧き起こるのはもっと断片的な記憶、もっと踏…

強者と弱者

とある二人組グループのメンバーのファンと思しき方々による『一方のメンバーを過剰なまでに称賛し、もう一方のメンバーを強烈に非難する』という現象をネット上ではじめて見た時には面喰った。その内容は大概にして客観性に欠け、極端な思い込みや事実の捻…

読書メモ『私とは何か』 ~来たるべき分人

平野啓一郎著『私とは何か ------「個人」から「分人」へ』を読んだ。一人の人間には色々な顔がある。たとえば家族に見せる顔と友人に見せる顔、職場で見せる顔はどこか違っている。かといってどれかが「嘘」「仮面」というわけではない。どれも確かに「本当…

きわめて「双子」的な

吉野朔実の漫画作品には、やたらと双子が登場する。作品の大きなテーマである自己同一性を語るのに双子、もしくはそれに準ずる間柄の設定を用意する必要があるからだ。哲学的・純文学的な雰囲気で描かれる双子たちは一風変わっていて、現実からかけ離れた存…

贈与と才能と

3/29のbay fmラジオにて、以下のような発言があった(注:厳密な抜粋ではありません。ふわっと書きとっています)。 (ものづくりのスタンスとして)求める以上に自分から与える努力をしている。そうすると(ミュージシャン達は)こちらは求めていなくても、…

読書メモ『ポピュラー音楽と資本主義』~いわれなき誹謗を考える

毛利嘉孝著『ポピュラー音楽と資本主義』を読んだ。20世紀的なポピュラー音楽は資本主義のイデオロギーを再生産するだけで究極にはファシズムと結び付く、という思想家アドルノの解釈を思考の手がかりとして、ポピュラー音楽の歴史や視覚芸術との関係、人種…

読書メモ『わかりあえないことから』~演技と即興と

平田オリザ著『わかりあえないことから---コミュニケーション能力とは何か』を読んだ。ざっくりまとめると、現在の日本社会が「異文化理解能力」と「日本型同調圧力」のダブルバインドにあっているために特に子どもや就活生は戸惑う場面が多いが、演劇を活用…